コンサルティング

コンサルティングの依頼方法(コンサルタントの使い方)

コンサルティング業界の実態は、一般には良く知られていないと思います。コンサルタントとしては、競合状況などのクライアントの知識が少ない方がある意味でビジネスがしやすい面があることは否定できず、業界の実態をあまりクライアントに積極的には伝えていないというのも確かです。しかし、コンサルティング業界の実態や正しいコンサルタントの使い方をクライアントに知っていただく方が、クライアントが失敗せず、コンサルティング本来の価値を実感していただくことにより、業界としてより健全に発展できるものと私は考えます。コンサルタントを志望される方々にとっても、コンサルティングの実態を知っていただいた上でコンサルティング業界に入ってきていただいた方が、より有能な人材を業界に取り込み、ミスマッチを防ぐ意味でもよいことだと考えます。私の一連のコラムにおいて、コンサルティング業界の実態を、できるだけ明らかにしていきます。

今回は、コンサルティングを使ってみたいとお考えの方が、どのようにコンサルタントを見つけ、選んだらよいのかについて書いていきたいと思います。

コンサルタントを使う場面と注意事項

コンサルタントを使う多くの場合は、ビジネスに何らかの課題を抱えているとき、ということになるのではないでしょうか。自社として課題が明確になっているほど、コンサルタント選びは容易になりますので、まずは何を頼みたいかを社内の議論によって明確化することをお勧めします。ただ、自社で考える課題やその原因の根は、考えられているのよりももっと深いところにあるのかもしれません。力のあるコンサルタント、クライアントサイドに立ったコンサルタントは、それを見つけて指摘してきます。しかし、反対に自分の得意分野に引きこもうとするコンサルタントもいるため、注意が必要です。例えばERPシステムに強いコンサルタントは、何でもERPに結び付けたがる、というような感じです。力のあるコンサルタントは、依頼された課題解決から逸れる場合には、なぜ観察された課題や原因が真の課題や原因ではないのかを分かりやすく説明してくれるはずですので、その態度に注意を払いましょう。課題を解決するためにコンサルタントを起用する場合は、プロジェクトとして有期で契約することになります。

一方、何か特別な課題がない場合にも、経営課題やその原因を発見し、解決方法の概略を指摘してもらうようなコンサルティングも行われています。本当に力があるコンサルタントを見つけることができれば、このような依頼の仕方も多いにありです。特に中堅企業、中小企業の場合、社内に経営の全ての分野に通じた社員を抱えることができませんので、不足する経営スキルを中心として、コンサルタントに経営の弱点やその解決策のアドバイスを定常的に依頼することは意味があると思います。但し、このような全社レベルのアドバイスができるコンサルタントは少なく、経営経験は殆どありませんので人を使う上での機微のようなことまでは理解できないコンサルタントも多いと言えます。全般的なマネジメントを見ることができる力量を持ったコンサルタントは少ないのが実情だと思います。定常的なアドバイスを求めるためにコンサルタントと契約する場合は、1年などの一定期間の契約として、延長する場合はその契約を更新していくことになります。

結局、コンサルタントも医者と同じだと考えればよいでしょう。既に何らかの疾患が認識できていればその疾患に応じた専門医を雇えばよく、総合的な健康管理のために自分のことをわかっていてくれ、必要に応じて専門家を紹介してくれる町医者的な存在があると頼もしいということです。

どのようなコンサルティング会社が存在するのか?

コンサルティング業界を俯瞰すると、大まかに以下のようなコンサルティング企業ないしコンサルタントが存在しています。

「戦略系」 かつて企業や事業の全体戦略の立案を依頼することが多かったため、この名があります。ただ最近は、依然として経営者の交代の際などに戦略の整理などを受注するようなことはあるようですが、戦略の立案そのものを請け負うという大ぐくりな発注はないように思います。最先端の課題や海外企業のレファレンスを必要とする仕事、グローバルレベルでの戦略の実行支援などが多いように思います。価格は高額であり、事業部レベルでは手が出ないことも多いと思います。
「会計系」 いわゆる4大会計事務所を中心としたプロフェッショナルサービスグループのコンサルティング部門です。本来「マネジメントコンサルティング」と呼ばれるSCMやCRMなど「〇〇マネジメント」のコンサルティングを得意としていましたが、そのマネジメントを行うためのツールであるITシステムの導入も大きな収入源としています。通常マネジメントコンサルティングよりもITシステム構築の方が価格、利益ともに大きいため、IT導入ありきの提案になることが多いように思います。
「シンクタンク系」 日系の金融機関などがグループに持つ「〇〇総研」のような名称の企業群です。国や地方公共団体の調査やコンサルティングも多く受託していて、そのためシンクタンク系と呼ばれています。政策や株価判断のためのアナリストを抱えていることもあります。シンクタンク系は大企業であることが多く、ほぼすべてのビジネス課題を解決するコンサルタントを網羅して(少なくともそう述べて)います。フィーのレベルは、外資系である会計系と同レベルか若干低めになっていると思います。よくも悪くもサラリーマンのコンサルタントというイメージであり、まじめで、特に日本企業での事例を多く持っている反面、経営にまでアドバイスを行うようなコンサルタントは少ないように思います。
日系独立系 日系の比較的大手のコンサルティング会社は、多くの場合次の2つのパターンになると思います。
第1のパターンは、事業計画の立案やITの導入などよりも、組織の文化や風土の改革、戦略の実行などについてのコンサルティングや、ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)を得意とするコンサルティング会社です。コンサルタントとは別に営業がいることが多く、営業からコンサルタントになる人も多いようです。
第2のパターンは、業界特価型のコンサルティングを行っている会社です。大きなコンサルティング会社でも、この業界特価型の集合体であったりします。このタイプのコンサルティング会社は、医院、宿泊業、レストランなど小規模な事業者が多い業種をクライアントにしていることが多く、コンサルタントは多くの場合アドバイザー的に固定フィーを受領して情報提供する形をとっています。このタイプの会社は、ウェブでの集客を得意とする会社も多く、ウェブ制作やCEOなどのノウハウに長けたコンサルタントを抱えていることも多くあります。業界事情や業界独特の課題に明るく、先進事例を持っています。
いずれも、フィーレベルは、会計系やシンクタンク系、人事系、IT系などのファームに比べると低いということができますが個社の事情を踏まえたコンサルティングよりも国内他社の事例を持ち込むことが得意なコンサルティング会社が多いと観察します。
人事系・IT系などの
専門ファーム
人事専門のコンサルティングやITシステムの導入に特化したコンサルティング会社が多く存在し、外資系も多くあります。人事の場合、各種の人事制度やタレントマネジメントのプロセスやポリシーの構築を支援しています。ITではERPなどのパッケージソフトウエアの導入を行う会社が多くあります。フィーのレベルは、概ね会計系と同じぐらいだと思います。人事系の場合、制度やポリシーについて得意の型にはめ込もうとすることが多いように思いますし、IT系はクライアントのビジネスよりもIT構築を優先しがちなところに注意が必要です。
個人のコンサルタント 上記のような様々な会社出身の個人のコンサルタントも多く存在しています。個人によってその力量は千差万別で、会社の利益を乗せられない分フィーは割安であることが多く、いい人を見つければ「お得」であるものの、会社が品質を保証しない分、しっかりと力量を見極めた上で起用することが必要です。多くの個人コンサルタントは、特定のクライアントと固定的な関係を持って仕事をしているか、大手ファームから専門分野の再発注を受けて仕事をしていることが多いと観察します。
その他 事業再生専門のコンサルティング会社が存在するほか、M&Aの企業価値評価やプロセスにアドバイスをするファイナンシャルアドバイザリーと呼ばれるコンサルタントも存在しています。また、税理士や会計事務所もコンサルティングを提供していますが、多くは経理・財務面のコンサルティングにとどまっていると思います。

 

どのようにコンサルタントを見つけるのか

どのようにコンサルタントを見つけるのかというのは、コンサルタントを雇う上で最も難しいことです。というのも、いいコンサルタントとよくないコンサルタントとの力の差は大きい反面、クライアント側によいコンサルタントと出会い、それを見抜くだけの情報がないからです。
最もよいのは、知り合いでコンサルタントを起用した経験がある、特に複数のコンサルタントと仕事したことがある人に紹介してもらうことでしょう。ベタな方法ではありますが、これが最良の方法だと思います。コンサルタントの持つ洞察力のようなものは提案書からはわからないので、そのあたりを既に経験している人から特に比較できる形で聴取できるというのは希少です。紹介者から紹介されるのが個人ではなく会社であって、紹介者の経験したのとは別のコンサルタントが紹介される場合でも、会社として既に得意先となっている顧客の紹介の場合、力あるコンサルタントを紹介する可能性が高いと言えます。ただ、企業の課題は企業ごとに千差万別ですのし、相性もあるので、ある企業ある人にとってよい経験があるコンサルタントであっても、他の企業や人にとって必ずしもそうであるとは限らないということには留意すべきです。
会社で依頼している会計士や税理士に相談してみるという方法もありますが、会計士の場合、グループの会計系のコンサルティング会社を紹介されるのではなかと思います(但し、それが会計監査の中立性の上で問題がある場合もありますが)。紹介された先を1つの選択肢として更に選択肢を加えた上で比較評価するというのもよいでしょう。銀行もコンサルティング部門を持っていることがありますので、取引銀行に問い合わせるのも1つの手段でしょう。
最後の方法として考えられるのは、ウェブでコンサルティング会社に目ぼしをつけ提案を依頼する方法ですが、正直なところこれはかなり困難を伴うと思います。多くのコンサルティング会社のウェブページを見ても何でもできるように書かれていることや、コンサルティング手法についての説明は殆どないこと、価格レベルについてもウェブだけでは全くわからないことからです。ただ、興味がある会社がある場合、ウェブからの問い合わせは1つのコンタクト方法ではあります。
いずれの方法の場合も、1社だけに最初から決めるのではなく、複数のコンサルティング会社を比較して決めるのがよいと思います。特に今までコンサルティング会社と付き合った経験がない場合は、いくら評判がよくても1社(者?) だけに決め打つのは、せっかくの出会いの機会を活さないこととなり、発注意思があるのであれば、もったいないと思います。ただ、コンサルタントは長い付き合いの中で力を発揮するものでもあるので、あまりいつも別のコンサルタントに依頼するとかえってうまくいかないことは、別の機会に述べたいと思います。

どういう基準でコンサルタントを評価するのか

まずは、秘密保持契約を締結した上で自社の課題をできるだけ詳しく伝え、どのように解決策を見つけ、解決していくのかの知見を聴取すべきです。一般的に行われているのは、複数のコンサルティング会社に提案依頼書(RFP: Request for Proposal)を出して提案を求めることです。次のような点を評価してコンサルタントを選択するのがよいと思います。

  • 自社や案件の責任者はどのような人かは、必ず確認してください。コンサルティングの質は、コンサルティング会社よりもコンサルタント個人に依存します。RFPに対して提案を依頼する場合、提案の中で誰が実際に自社を担当する責任者なのか、その人の経験や実績は何かなどを明示するように求め、経歴やプレゼンなどから経験や力量を見極めます。できれば、プレゼンだけではなく、個別にインタビューした方がよいと思います。但し、海外企業の実例を参考にしたいとか、業界での先進事例を知りたいなどの場合には、それが可能な企業を選択することも考えられます。
  •  複数のコンサルタントが関与する場合、責任者だけではなく、関与するコンサルタント全員をインタビューすべきです。コンサルティングの質の圧倒的大部分は責任者やプロジェクトマネージャーに依存しますが、スタッフは責任者以上に玉石混交だからです。コンサルタントの力量はよほどの経験がなければインタビューだけから判断することは難しいですが、「?」と思ったら人を変えてほしいというお願いをした方がよく、そうしたいということをRFPの中で宣言しておくべきです。コンサルティング会社は、現実問題として有能な人とそうではない人の両方を抱えています。コンサルティング会社の経営としては有能ではない人もどこかで稼働させなければならないのですが、自社にそのような人を割り当てられるのは積極的に防止すべきだからです。発注後であっても、「?」と思う人がいたら、責任者に相談してみたほうがいいと思います。フィーリングであっても合わないコンサルタントは変えてもらったほうがいいと思います(これに言及すると同業者からは恨まれそうですが・・・)
  • 課題をどのように解くかについてのアプローチをできるだけ詳細に提示してもらい、それを評価するようにしたほうがよいと思います。アドバイザー形式での定常的なコンサルティングではアプローチは存在しないこともありますが、プロジェクト型の場合は時間勝負なので、アプローチこそがコンサルティングの命であり、プロジェクトが始まる前にアプローチをできるだけ明確にした方がいいと言えます。アプローチそのものにもコンサルタントの技量が如実に出ますが、特定のアプローチを採用している理由を質問すると、そのコンサルタントの経験や思考方法を知ることができます。プロジェクトを進行していくにつれていろいろなことが明らかになり、アプローチ自体を変更しなければならないことになる場合もありますし、それはそれで柔軟に行ったほうがいいのですが、最初に仮のものであったとしても課題解決へのアプローチを確認するということは重要です。

その他の契約前に確認すべきこと

以下を特に注意してください。

  • コンサルティングは、依頼主とコンサルタントの共同作業です。依頼主側の情報提供や協力がなければコンサルティングはスムーズに進みません。依頼主として、コンサルティングにどのように参加するのかを確認してください。コンサルティングプロジェクトは社員教育の場でもありますので、できるだけ有能な社員を巻き込むことをお勧めします。
  • コンサルティング契約は、通常、準委任契約となり、期間の経過とともに終了してしまいます。しかし、コンサルティング契約前に成果物が何で、どのような基準でそれが作成されるのか、プロジェクトの場合プロジェクトを終了したと言える基準は何かを確認しておくことは、道義的にも、継続的な関係を構築する上でも非常に重要です。

いかがでしたでしょうか?ご質問がありましたら、お問合せフォームからお気軽に質問してください。ここに書けないことも含めて私の知識の範囲でお答えします。お問合せでフィーをいただいたり、特定のコンサルタントと結託して売り込みをするということもありませんので、ご安心ください。

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